児童

【書評】有川浩「明日の子供たち」/

こんにちは、nono(@nn00km)です。

「図書館戦争」や「阪急電車」の作者として有名な有川浩さん。

私は有川さんの書いた小説が大好きで、何冊も読んでいます。

あったかくて、優しくて、切なくて。

綴られている文章がすーっと心に入っていくのです。

そんな有川さんが児童養護施設を舞台にした本を書いていました。

タイトルは、「明日の子供たち」

有川さんは自分の足で調べて物語を書くそうです。

だからきっと、この小説で起きていることはどこかの現実なんだろうなと。

福祉職についている人もついていない人もぜひ手にとって読んでみてほしい。

そう思ってこの記事を書いています。

あらすじ

三田村慎平は転職先の児童養護施設で働き始めて早々、壁にぶつかる。生活態度も成績も良好、職員との関係もいい”問題のない子供”として知られる16歳の谷村奏子が、なぜか慎平にだけ心を固く閉ざしてしまったのだ。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日がやってくる。先輩職員らに囲まれて成長する日々を優しい目線で描くドラマティック長編。

ー文庫版裏表紙より

児童養護施設にいる子供たち

児童養護施設で暮らすのは、何らかの理由で家族と一緒に暮らすことのできなくなった子供たちです。

当たり前のように両親と暮らしてきた私には、親のいない生活が想像ができません。

みんなと同じように大学へ進学して、一人暮らしもさせてもらいました。

施設にいられるのは高校卒業まで。

高校に入るとその先の生活のために資金を貯め始めます。

多くの施設では、就職を推奨しているようです。

高校を卒業して就職をする。

それを当たり前に思う子供たちもいるかもしれません。

学生時代に就職する同級生はいましたが、少数派でした。

私よりもずっと、生きることに一生懸命だったのではないかな。

本の中には、その他にも私には縁のなかった出来事が描かれています。

それは、私の知らなかった世界でした。

「かわいそうだと思ってほしくない」

登場人物の一人である高校生カナは、繰り返しそう言います。

彼女も児童養護施設で暮らす一人です。

私には、児童養護施設で育った友人はいません。

もしかしたらいたのかもしれないけれど、打ち明けられたことはありません。

私の暮らす世界に、児童養護施設は存在していませんでした。

すごく小さな世界で暮らしているのに、それが全てだったのです。

その外にはもっと広い世界が広がっているのに、気づけません。

はあちゅうさんの著書「半径5メートルの野望」の中にこんな言葉がありました。

「自身を含めた多くの同世代が、自分の身の回りの『半径5メートル』圏内の日常にしか興味がない」

本当にその通りだなって思います。

学校や職場での人間関係、家族、恋人。

私たちが気にするのはそれくらい。

見える範囲は小さくて、世界のすべてなんて分かりません。

それなのに、ニュースやドラマで聞いた話だけでなんとなく知ったような気でいます。

なんとなく知っている状態が、一番怖いです。

私は、社会福祉士養成の専門学校に通っています。

先日、児童養護施設のドキュメンタリーを授業で見たばかり。

職員も子供たちも一生懸命生きているように感じました。

家族だけど、他人じゃない。

そんな存在として向き合っていました。

かわいそう、とまでは思わなかったけれど、たくさんの生きづらさがあっただろうなと思います。

「ここがなかったら、どうなってたか分からない」

そんな風にいう子供もいました。

福祉施設のことは、なかなか外からは分かりません。

私も働いた職場以上のことは分からないです。

でも、もっと知りたいなと思っています。

そして、皆さんにも知ってもらいたいです。

「明日の子供たち」が私にくれたもの

学校や職場の中にだって、仲良くできる人とできない人がいますよね。

この人は私と似てるから仲良くしよう。

この人とは考えが合わないから距離をとろう。

自分と共通点があるとほっとします。

出身地が同じとか、好きなものが同じとか。

逆に、自分とは違う境遇の人、自分と違うものをもつ人に対しては、身構えてしまいます。

認知症をもつ人。障害をもつ人。

無意識のうちに線引きをしながら暮らしています。

この本を読んで思ったのは、

違う世界なんて、ないんだということ。

小説のなかで繰り広げられる世界は、私には馴染みのない世界でした。

だけど、有川さんの他の物語に出てくる登場人物と同じように、ぶつかったり、悩んだりしながら前に進もうとしています。

先生も、子供たちも。

私たちと同じ。

みんな好きになりました。

隣にいたら、きっと応援したくなる。

色んな人がいて、全ての児童養護施設が本のようではないかもしれないけれど、こんな場所もあるのだと思います。

私が知らなかっただけで、そういう世界はあるんです。

子どもを守るのが、大人の役目。

だけど、小さな私にできることはあまり多くありません。

今の私にできることは、きっとこの本を広めて知るきっかけをもってもらうことくらい。

この記事を呼んだあなたが、本を手に取ってくれたら嬉しいです。

読み終わったら、ぜひ解説も読んでみてください。

また違う世界が見えるはず。

nono